ライター 阿部真麩美
最近、海外で日本の伝統技術の金継ぎが注目されているそうです。
金継ぎとは、割れたり欠けたりした器を漆(うるし)で修復し、継いだ部分を金や銀などで装飾する、日本の伝統的な修復技術のこと。
海外の陶磁器の修復が、壊れる前の状態にできるだけ近づけるための修理なのに対し、金継ぎは割れたところを生かしながら新たな芸術に仕上げる技術で、初めからその装飾がなされていたかのような唯一無二の器として蘇らせてくれるのです。
その歴史には諸説あるようですが、安土桃山時代の「茶の湯」の文化を背景に生まれ、日本人が古来より持っていた「もったいない」の精神を芸術へと昇華させていったようです。
海外で人気になったきっかけは、アメリカの人気ロックバンドが「Kintsugi」というアルバムを出したり、ハイエンドファッションブランドが「金継ぎ」をテーマにクチュールを発表したり、人気映画「スターウォーズ」シリーズで金継ぎ方式で修復されたマスクが登場して話題になったことなどが挙げられます。
「欠点を欠点として受け入れて、隠すことなく、より魅力的に成長する」という考え方の象徴になっていて、今や哲学としてセラピーや経営にも導入されているというから驚きです。
日本でも、各地のカルチャーセンターで「金継ぎ教室」が開かれているので、体験している方も多いと思います。
実は私の友人も、10年ほど前に通っていました。
お気に入りの器を使い続けたくて始めたのですが、だんだん面白くなってきて家中の器を直した後は身近な人に声をかけて直しまくり、最後には壊れていない器までわざと割って金継ぎするようになってしまったそう。
そこで、自分は何をやっているのだろう、と本末転倒に気づき、カルチャー教室をやめました。
当然、私も「割れた器を金継ぎさせて」と声をかけられていたのですが、こちらも直してまで使いたい器はお気に入りのものだったため、「もうちょっと上手になってからお願いしたいわ」と言っているうちに、彼女の「金継ぎブーム」は終わったのでした。
テレビや新聞で金継ぎが流行っていることを知って思い出したのが、茶道の先生にお聞きした「猫割手(ねこわりで)」という茶碗の話。
その名の通り、窯場に入り込んだ野良猫に割られてしまった茶碗を銀継ぎで修復した銘品です。
製作したのは千利休のわび茶の理想に叶う茶碗を作り続けている樂家の十五代 吉左衛門・直入で、大切にしていたものが割れてしまって落胆している様子を見た夫人が、内緒で修復に出しました。
戻ってきた茶碗を見た直入は、元の茶碗より良いと喜び、この銘をつけたのだそう。
修復されたものをその作者が「以前より良くなった」と面白がるところに、謙虚さと精神の豊かさを感じ、芸術の奥深さを垣間見た気がしました。
千利休が愛した茶碗づくりを継承する樂家15代当主 樂吉左衞門(nippon.com)
割れる前も素晴らしかったのでしょうが、こんな素敵なエピソードを添えられる茶碗はなんと恵まれているのでしょう。
そして、結果論ではあるけれど、野良猫も良い仕事をしたのではないでしょうか。
なんだか、金継ぎを愛でる精神は猫を愛するのにも似ているような気さえしてきます。
どんな欠点も可愛く思えるし、世界でたったひとつの唯一無二の存在なのですから。
さて、カリカリーナでは、オプションで銀継ぎならぬシルバーで猫の名入れを行なっています。
ただ、花柄のFioreについては、シルバーでは目立たないというお客様の声が寄せられているため、曲線(それぞれピンク、ブルー、オレンジ)と同じ色に変更する方向で検討中なんですって。
年内には決定するそうなので、Fioreを購入予定の方はぜひキリッと目立つ名前入りで、唯一無二のカリカリーナを猫さんにプレゼントしてあげてくださいニャ。
#48 忙しい時ほど猫を見ろ!ってことらしいので、イケてる写真を募集しますニャ。
#47 みニャ様のお墨付きを目の当たりにして、ちょっと黒いことを考えてみた。墨だけに。
#46 持つべきものものは「生きる力」。猫も子どもも一緒だニャ!