ライター 阿部真麩美
2年ほど前から始めた俳句で、変わった季語を見つけました。
「地上とは数ならざるや木の葉髪」
劇作家の寺山修司の俳句ですが、「木の葉髪(このはがみ)」というのが初冬の季語になります。
晩秋から初冬にかけて抜け毛が増えますが、それを木の葉が落ちるのにたとえて「木の葉髪」と言う季語になったそう。
この句の解釈はよくわかりませんが、地上にあるものは抜け毛が生え変わるように変化していくことを詠んだようです。
そう、木の葉髪と抜け毛。
同じものなのに、言い方次第で文学の香りがしてきますよね。
猫の抜け毛にも、同じことが言えそうです。
と言うのは、少し前にツイッターで猫の抜け毛を利用した爆笑モノのつぶやきに出会ったからです。
猫の抜け毛で各種ズラを作ってみました。 pic.twitter.com/9U6TH7tD4f
— 山口隆之 (@FujizoushiBot) August 14, 2021
ネットニュースでも話題になったので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
捨てるしかなかった抜け毛で、カツラを作ると言う発想が秀逸ですよね。
そして、こんな本も見つけました。
【5階/ねこ】rojiman&umatan著「ねこかぶり 抜け毛帽子でおめかしコレクション」宝島社840円+税
— 書泉グランデ【営業時間_11:00~20:00】 (@shosengnd) June 21, 2017
このねこたちのかぶる帽子はすべて彼らから抜け落ちた「毛」でできているそうです。本体同様可愛らしい帽子たちです。 #グランデ5階通信 #ねこ pic.twitter.com/ITOG8uEHRu
もう、猫の抜け毛はゴミではなく、アートの素材として通用しているのです。
そう言えば、ブラシについた自分の抜け毛はわずかな嫌悪感を持ちながら捨てるのに、今は亡き愛猫のデンちゃんをブラッシングした際の抜け毛は、愛おしさを振り切るようにして始末していたことを思い出しました。
デンちゃんは長毛種だったので、毛がふわふわ。
くしけずった抜け毛は、捨てるには惜しいくらい気持ちの良い感触で、何かに使えそうな感じがありあり。
同時に、人間より寿命が短いから、いつかこのふわふわを手にできない日が来るのかなと言う思いもよぎっていました。
同じように感じていたのが、高校時代からの友人、Mちゃんです。
彼女は大型犬が好きで、ミントという名前のシェパードと暮らしていました。
とても可愛がっていたけれど、4年前に15才を迎える間際に亡くなりました。
愛犬を写真だけでなく、立体でも残したいと思ったMちゃんは羊毛フェルト教室に通い、半年後に出来上がったのがこの写真です。
微妙な色の再現も見事。糸を混ぜて色を作るのは難しいのです。
羊毛フェルトとは、羊毛を特殊な針でつつくことで繊維を絡めながら、刺繍をしたり好きな形を作っていく手芸です。
初心者で下手くそな時に作ったからと写真を固辞していたのだけれど、見せてもらったらなかなかの出来!ですよね。
その時のために取っておいたミントの抜け毛と、黒い部分には羊毛を足してひと針ひと針、形を作っていった様子が目に浮かびます。
特に、背中の曲線が大好きだったので、その部分には拘ったそう。
撫でた時の感触を手が覚えていたのでしょうか、なだらかで優しい背中が再現できています。
製作していた時間は、Mちゃんにとってもミントにとっても、素敵な時間だったと思います。
私はデンちゃんの抜け毛は持っていないので、最近すっかり手芸サークルと化した写仏同好会で教わった羊毛フェルト刺繍で、セーターにデンちゃんを再現することにしました。
が、やはり初心者。
茶と黒とベージュの色を再現するところから難しく、即撃沈。
仕方なく、1色でできる黒猫の後ろ姿を刺してみました。
袖口のところの猫もどきは、失敗したデンちゃんの羊毛フェルト刺繍。
デザイン的には可愛くできたので満足ですが、いつかデンちゃんを再現したいという野望は捨ててはいニャイのです。
ちなみに、保護猫カフェNECOT COFFEE HOUSEさんで教わった情報ですが、カリカリーナについた抜け毛は、発泡ゴム素材のペットの毛取りスポンジがよく取れますので、お試しくださいね。
お客様の声より、ラグドールのシフォンちゃん
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