カリカリーナのKAI工場長もお世話になっている、安房中央動物病院の作佐部紀子(さくさべ のりこ)先生に、猫の健康にまつわるあれこれを教えていただく新連載。第一回目は、「夏の健康管理のポイント」です。

猫は暑さには比較的強いと言われていますが、湿気に弱いため、高温多湿の日本の夏は例外です。夏場も、温度と湿度をきちんと管理したり、水分補給に気を付ける必要があります。今回は、夏のケアのポイントについてお伝えします。
1: 夏場も室内の温度・湿度管理が不可欠
2: 水分補給のコツ
3: 皮膚・被毛のお手入れ
4: 猫種によって異なる注意点
Point1: 夏場も室内の温度・湿度管理が不可欠

猫は基本的に肉球ぐらいしか汗をかかないので、汗をかいて体調調節するのは難しいと考えて、暑くなりすぎないように室温を保ってあげるのが大切です。
エアコンは28~30℃、除湿モード
夏の間は、熱中症を防ぐため、エアコンはつけておきましょう。温度設定はエアコンにもよると思いますが、目安としては28~30℃、除湿モード。エアコンの風があたるのを嫌うので、風があたらない場所に猫の居場所を作ってあげましょう。湿度の基準は、明確に何%というのはありません。暑いとカラっとしていたほうがいいし、涼しければ湿度が高めでも大丈夫です。
猫が自分で調節できる工夫を
エアコン嫌いの猫ちゃんも結構いるので、他の部屋に移動できるようにドアを少し開けておくのもポイント。部屋の中でも、ちょっと涼しく感じるようだったら布団に潜れるようにしておくなど、自分で快適な場所を選べるようにしておくと良いと思います。ケージ飼いの方もいらっしゃると思いますが、直射日光が当たって暑くなってしまったり、エアコンの風が直接あたってしまうのは避けたいところです。
Point2: 水分補給のコツ

夏場はとにかく、たくさんお水を取ってもらうのが良いです。飲水量を増やすコツをいくつかお伝えします。
水の器を清潔にする
水を飲んだ時に、食べかすがお水に落ちるため、夏場はお水が腐りやすいです。水は朝晩取り替え、食器はきれいに洗ってあげてください。
口の広い器を使用する
器のフチにヒゲがあたるのを嫌がる子がいます。そうでない子も、器の奥まで口を突っ込んで水を飲んだりはしません。多くの猫は、「口の広い器になみなみお水が注いである」という状態を好みます。
食器の材質
陶器、ガラス、ステンレスを好む子が多いです。プラスティック容器だと臭いが残ることがあるため、好まない場合があります。
何か所かに設置する
落ち着いて飲める場所を見極めるために、最初は何か所かに設置してみるのも良いと思います。「ここで良く飲んでいる」という場所が分かったら、設置場所は減らしても構いません。
いろんな水を用意する
新鮮な水を好む子と、一日日光にあてて塩素を飛ばしたような水を好む子がいます。また、お風呂の残り湯を洗面器に取って置いたら、それを好んで飲む子もいたり、お風呂場の床の水を舐めにいく子もいます。そういう意味では、「きれいだから良い」とも限りません。(※お風呂場に猫ちゃんを入れる場合、湯船に落ちて溺れる事故がないように注意してください。)
流水を好む猫ちゃんには、ウォーターファウンテンを使用したり、蛇口から細く水を出してあげてください。
水に香りをつける
鰹節やささみの茹で汁、にぼし出汁などで寒天ゼリーを作ると、ちゃぷちゃぷした水より舌に絡まるということもあり、飲んでくれる場合があります。
(※ゼラチンだと腎臓に悪影響を与えることがあるため、寒天を使うところがポイントです。逆に、甲状腺機能亢進症を発症した猫ちゃんにはヨードが入る海藻類=寒天は避けた方が良いです。)
ウェットフードにする
水分の多いウェットフードを活用するのも良いと思います。普通のウェットフードをお水やお湯で薄めても、たくさん飲むかもしれません。
食事回数を増やす
人間が食事のあとにお茶を飲むのと同じで、猫もフードを食べたあとにお水を飲みに行くと思います。そのような行動を増やすために、食事回数を増やすのがおすすめです。日中留守にする場合は、朝一番、出かける前、帰宅後、寝る前というように、4~5回に分ける。自動給餌機を活用するのも良いと思います。
Point3: 皮膚・被毛のお手入れ

暑くなるので、皮膚が蒸れないようにしましょう。被毛はいつでもきれいに清潔にしたいですが、特に長毛の子は、脇の下や鼠径部に毛玉ができやすいため、あらかじめバリカンでカットしておくのも良いかもしれません。
ノミ・ダニが一番多くなる時期なので、室内飼いでも、人間がノミを持ち込んでしまうことがあります。足元をしっかりはたいてから家の中に入ってください。外の猫ちゃんを触った時は、皆さんしていると思いますが、おうちの子と触れ合う前にしっかり手を洗ったり、着替えたりしたほうがいいですね。お外に出る子は、動物病院で予防薬・駆除薬をもらうのが良いと思います。
Point4: 猫種によって異なる注意点

毛が少ない子や、スフィンクスなど元々毛のない種類の子は、冷房の寒さを感じやすいので、潜れる場所を作ってあげたいです。
長毛の子は先ほども書きましたが、脇の下や鼠径部の毛を刈ってあげると、毛玉防止にもいいし、暑さ予防にもなります。サマーカットまではしなくても、エアコンさえ入っていれば、毛玉のできやすい部分をカットしておくということで十分かなと思います。長毛でも、アンダーコート(ふわふわとしてやわらかく、オーバーコートの下に生えている綿毛のような毛のこと)が多い子と、毛は長いけどサラサラしている子がいますが、アンダーコートが多い子は、ブラッシングでこまめに取り除きましょう。