ライター 阿部真麩美

この夏、猫よりも犬の方が幸福度を上げてくれるというニュースが目に止まりました。
明治大学の堀田秀吾教授著「科学的に証明されたすごい習慣大百科」に掲載された説で、著名な研究者により科学的に証明された「人生を変えるテクニック」を紹介しています。
人の幸福度を上げてくれるのは猫よりも犬?最新の研究が明らかにしたその納得の理由 [Yahoo!ニュース/集英社オンライン]
この説、猫派の皆さまはどう受けとめられましたか?
私は、何事も「そんなの人それぞれでしょ」と考える傾向があるので、モヤッとしました。
猫の飼育頭数が増えたせいか、近頃はあまり「犬VS猫」で犬優位を説かれることがなかったため、免疫力が落ちていたようです。
記事によると、動物と触れ合うことで幸せホルモンのセロトニンやオキシトシンが増えることに触れながら、飼い犬と60分間接すると、オキシトシンが少なかった人ほど、大きな反応があったとしています。
はあ、そうですか。
また、犬は朝夕の散歩が欠かせないことから、飼い主自身が屋外に出て日光を浴びることで、セロトニンの分泌量が増えるという点も指摘されています。
規則正しい生活を送るだけでなく運動にもなりますから、肉体的には犬を飼っている方が健康的。
これについては納得です。
また、別の研究論文に出ていたのは、散歩途中に出会った人と会話が生まれ、新しいコミュニティに参加する機会が増えるなどで、人間関係が広がることが犬を飼うメリットとして上げられていました。
いや、これは逆にストレスと感じる人もいるのでは。
でも、科学的な証明がなされていると言われると、「それならそうなんでしょうね」としか言えません。

そもそも「幸福度」とはなんでしょうか。
幸福度指標の代表とされるのが、OECD(経済協力開発機構)の「Better Life Index(より良い暮らし指標)」で、住宅、所得と富、雇用と仕事の質、社会とのつながり、知識と技能、環境の質、市民参画、健康状態、主観的幸福、安全、仕事と生活のバランスという11の項目により構成されます。
ただ、国ごとの環境や国民性により数値の現れ方に影響がでるため、日本の国土交通省では、個人の主観的な満足度だけでなく、GDP、健康寿命、社会的つながり、自由度、寛容さといった客観的・主観的要因を含めて測定し、 短期的な快楽だけでなく、人生全体の生きがいや意義といった長期的な視点も含むとしています。
さらに別の研究では、ペットの幸福度向上効果は、金額に換算すると1300万円分に当たるとありますし、ノーベル経済学賞受賞者の計算では、幸福度のピークは年収800万円で、高ければ良いというわけではないとしています。
幸福度とは、こんなに面倒臭い指標を元に成り立っているのです。

「科学」という言葉だけでなく、「数字」を出されることでも、人は反論しにくくなりますね。
でも、数字だって時としては曖昧なもの。
例えば、バブルの時代を経験した方は、当時、幸福の99.9%はお金で買えるという経済学者の説がまことしやかに流布していたことを記憶しているかと思います。
お金の力を目の当たりにしたことで、「確かにそうかも」と思う部分もありましたが、同時に、経済学者をしても100%と言えないところにこそ、ロマンがあるのだという意見を聞いた時の驚きといったら。
私の中では、0.1%が99.9%を吹き飛ばした瞬間でした。
逆張りではないけれど、データは反対側から見ると新しい視点が生まれるのは確か。
人はロマンを求めるものだし、ロマンのない人生なんて、それこそ退屈だニャ〜なんて顔をしてカリカリーナでまったりしている猫さんを見ていると、羨ましく思いつつも、そんな姿にさせてあげられる幸せを噛み締めちゃいますよね。
